動悸やイライラ、不眠に急な発汗など、更年期に差し掛かった女性には様々な不調が現れることがあります。これらは決して何かの病気が原因になっているとは限らず、閉経期のホルモンバランスの乱れによる更年期障害である可能性が高いと言えます。更年期障害は決して珍しい症状ではなく、女性なら誰でも多かれ少なかれ何らかの症状が出てしまうものです。もし違和感を感じた場合は、遠慮せず婦人科などを受診して相談してみましょう。

医師に診察してもらって更年期障害だと判明したら、症状がひどい場合は薬を用いた治療を行うこともあります。処方薬が貰えなくても、最近は更年期障害の症状を緩和させる効果のある市販薬や漢方などが数多く販売されています。自分の症状をしっかり理解し、適切な薬を選ぶことがポイントです。

更年期障害の主な症状について

ひどい肩こり ひと口に更年期障害と言っても、症状の現れ方や重さは人それぞれで非常に種類も多いです。代表的な症状を知り、自分の症状と照らし合わせて更年期障害なのかどうかの判断に役立ててみて下さい。

更年期障害の症状として最も代表的と言えるのが、急に現れるのぼせや火照りです。ホットフラッシュとも呼ばれ、顔や上半身を中心に急に熱くなったり発汗が抑えられなくなったりします。熱くなったと思ったら直後に一気に体が冷えたり、顔は暑いのに脚は寒くてたまらないといったようにアンバランスな状態になることもあります。

酷い肩こりの症状に悩まされる人も多く、中には日常生活がままならなくなるほど症状が酷くなるほどです。更年期に入ると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急速に減少してしまうため、自律神経が乱れやすくなります。すると血行が悪化して筋肉が緊張しやすくなり、酷い肩こりへと発展してしまいます。解消するにはできるだけ肩へ負担をかけないようにし、軽い運動やストレッチによって血行促進を目指しましょう。

更年期には頭痛が頻発することがあるのですが、これも更年期障害の症状の一つです。エストロゲンが減少することで脳の毛細血管が収縮したり痙攣しやすくなり、頭痛を引き起こすと考えられています。もともと体質的に頭痛持ちだった人などは、更年期に入ると一気に症状が悪化することもあるので注意が必要です。

めまいや耳鳴りを感じることも多く、これも頭痛と同じようにエストロゲンの減少によって血管が収縮することで三半規管が正常に機能出来なくなることが原因です。症状そのものは軽く済むことがほとんどですが、慢性的に耳鳴りを感じてしまうとストレスも非常に溜まりやすく、鬱を発症してしまうケースもあります。自然に治まることがほとんどですが、油断せず症状をチェックしておきましょう。

神経系の症状で最も多いのが、理由もなくイライラしてしまうことです。ホルモンは感情のコントロールに密接に関わっており、ホルモンバランスが乱れがちな更年期には些細な出来事で一気に感情が爆発したりイライラしてしまうことがあります。典型的な症状とも言え、気分が不安定になって鬱になってしまう人も多いので要注意です。

イライラの他に、毎晩よく眠れなくなる不眠症状も挙げられます。これもホルモンの減少によって自律神経が乱れ、ぐっすり眠るために必要な副交感神経が働かずに不眠になってしまいます。自律神経は適度な運動やリラックスタイムを設けることで予防することもできるので、毎日意識して行うようにしましょう。

こういった更年期障害の主な症状は、単にホルモンの影響だけではなく患者本人の性格や生活スタイルなどによっても大きく左右されます。中にはほとんど症状を感じず更年期を終えられる人もいれば、数年間も辛い症状に悩まされ続ける人もいるので治療も難しいと言えるでしょう。基本的に、症状は自律神経失調症と精神症、それ以外の症状の3種類に分けることができます。自律神経失調症と精神症はよく似ているので混同されがちですが、正確には明確に区分されるべき症状です。

自律神経失調症の代表例としては、上述したのぼせや火照りなどのホットフラッシュが該当します。ホットフラッシュは実に40%から80%の女性に現れる症状とも言われており、そのうちの25%程度は何らかの地領が必要とされるほどです。他にも慢性的な疲労感や胸の動悸、頭痛にめまいなど様々な身体的症状が自律神経の失調から起きています。

一方の精神症としては、イライラしやすくなったり鬱症状が出る、感情が不安定になるなど主に精神的な症状が挙げられます。訳もなく焦ったり興奮状態に陥る、集中力が無くなったり物忘れが酷くなるのも精神症が原因です。これら以外にも痺れや吐き気、便秘に排尿障害、痒みに浮腫みなどあらゆる症状が起こり得るので、女性にとっては非常に辛い期間になります。

更年期障害の治療法について

更年期障害の治療を受ける女性 あまりにも更年期障害の症状が辛い場合、病院を受診すると薬を用いた治療を勧められることになります。更年期障害の主な治療はホルモン補充療法や漢方療法、それ以外の薬物療法などです。その人の症状や体質などを見極めながら主治医が選択するのですが、どの治療法を選ぶかによって薬の種類も代わってきます。

ホルモン補充療法

更年期障害の治療に最も用いられるのが多いのは、エストロゲン単剤などを用いたホルモン補充療法です。辛い更年期障害の症状を引き起こす直接的な原因は、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が著しく低下してしまうことです。そこで、減少してしまったエストロゲンを外部から十分に補充してあげることで、症状を改善したり抑えることが期待できます。現在日本でホルモン補充療法によく用いられている薬はいくつかあり、成分はエストロゲン単剤として結合型エストロゲンやエストラジオールなどが主流です。エストロゲン単剤は錠剤以外にも外用薬でも使用されており、貼り薬や塗り薬としてエストラジオールが配合されています。

ホルモン補充療法は、エストロゲン単剤以外に黄体ホルモン配合剤も盛んに用いられています。錠剤タイプではエストラジオールやレボノルゲストレル、貼り薬では同じくエストラジオールに酢酸ノルエチステロンなどが一般的です。他にも黄体ホルモン製剤が使用されており、錠剤の酢酸メドロキシプロゲステロンにジドロゲステロン、ノルエチステロンなどの黄体ホルモン製剤が挙げられます。

ホルモン補充療法の他に、体質によっては漢方療法が利用されることもあります。東洋医学に力を入れている病院だと積極的に漢方療法を勧めてくることもあるので、西洋医学のエストロゲン単剤や黄体ホルモン製剤治療を希望している場合は注意しておきましょう。

漢方療法

漢方療法はホルモン補充療法が普及する以前から広く親しまれてきた治療法で、有効成分によって効果的に症状を改善させるというよりも、症状を少しずつ抑えながらホルモンの減少に身体を慣らしていくことが漢方療法の主な目的となります。更年期障害の幅広い症状に対応することができ、身体への負担も少ないという点が魅力です。

帰芍薬散エキス顆粒と加味逍遥散エキス顆粒

更年期症状の緩和に最もよく利用されているのが、帰芍薬散エキス顆粒です。帰芍薬散エキス顆粒は一般的にも冷え性や貧血傾向のある人がよく服用する漢方で、産婦人科の三大漢方の一つとも呼ばれています。帰芍薬散エキス顆粒の主な効果は血行を促進して身体を温めることで、月経不順や産後の不調改善などにも広く利用されています。特に更年期障害によって発生する疲労感や頭痛、めまいに動悸といった諸症状に高い効果を与えるとされており、昔から更年期と言えば帰芍薬散エキス顆粒と言われているほどです。帰芍薬散エキス顆粒などの漢方は西洋医学の医薬品と比べても効果が緩やかで安全性が高いとされており、より安心して体質改善に役立てることができます。

加味逍遥散エキス顆粒も更年期障害に役立つ漢方として知られており、特に自律神経の改善に効果を発揮してくれます。突然やって来る不安や不眠、感情の起伏など精神的な症状に加えて、肩こりや頭痛、火照りや冷えなど身体的な症状にも効果的です。加味逍遥散エキス顆粒も帰芍薬散エキス顆粒と同じく、女性の三大漢方の一つに数えられるほど有名な薬です。加味逍遥散エキス顆粒の逍遙という言葉にはブラブラ歩きまわるという意味もあり、幅広い症状が移り変わりながら現れる更年期障害に最適な漢方として人気があります。

帰芍薬散エキス顆粒や加味逍遥散エキス顆粒のような漢方の他に、睡眠導入剤や安定剤などの精神薬も利用されることがあります。鬱症状や不安感などが特に酷く出ている場合、まずは鬱状態を改善することが先決となるので抗不安薬や抗うつ剤などが欠かせません。鬱状態が改善したら、加味逍遥散エキス顆粒などの漢方やホルモン補充療法へ移行していきます。

黄体ホルモン製剤は子宮がんの予防のために使用される

黄体ホルモン製剤は更年期障害のホルモン補充療法として使用されると上述しましたが、それ以外に子宮がんの予防目的でも行われています。子宮がんが発生する原因には女性ホルモンの影響も大きいことが分かっており、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンのバランスが崩れることで発症しやすくなります。

エストロゲンが担っているのは受精卵を着床させやすくするために子宮内膜を厚くする作用で、プロゲステロンの役目は子宮内膜が厚く成長するのを防ぐ作用です。2種類のホルモンがバランスを保って分泌されることで子宮内膜は理想的な状態を維持しているのですが、このバランスが崩れてしまうと子宮内膜に異常が発生し、子宮がんとなってしまいます。

プロゲステロンの分泌が低くなると子宮内膜の成長を抑えきれず、どんどん増殖して子宮がんになってしまう可能性が高まります。この状態を予防するために役立つのが、黄体ホルモン製剤などを使用したホルモン療法です。低下してしまったプロゲステロンの分泌をカバーするために、プロゲステロンとよく似たメドロキシプロゲステロン酢酸エステルという成分を配合した黄体ホルモン製剤が用いられます。既に子宮がんになってしまっている場合は、この薬を使用すると同時に子宮内膜を一度全部掻き出す手術が行われます。

一度でも子宮がんを発症してしまった人は、例え完解していてもいつ再発するか分かりません。ホルモンバランスが崩れている限り発症の可能性は捨てきれないので、症状によっては予防目的で黄体ホルモン製剤を使用し続けることもあります。ホルモン療法を行うことで子宮を摘出せずにがんの治療や予防を行うことができ、女性の身体に大きな負担をかけることがありません。治療効果の高さや再発防止の観点から考えれば摘出してしまった方が良いのですが、子宮がん患者の中にはいずれ子供を産みたいと希望する女性も多く、希望を繋ぐためにも無くてはならない治療法だと言えます。

手術で子宮を全て摘出してしまった場合は、予防目的で使用される黄体ホルモン製剤は適していないため使用されることはありません。あくまでも予防目的で用いられるので、摘出した人はエストロゲンのみを服用してホルモン療法を継続していくことになります。

ひと口に黄体ホルモン製剤と言っても、現在日本で使用されている製剤にはいくつか種類があります。最もポピュラーなのは上記でも述べた酢酸メドロキシプロゲステロンで、様々な錠剤に配合されています。この他、ジドロゲステロンにノルエチステロンなどもよく使用されており、患者の状態によって適している種類が異なるので担当医の慎重な判断が欠かせません。

黄体ホルモン製剤が使用される状況や使い方は患者によって異なり、何らかの治療でエストロゲンを服用している女性などに積極的に併用されます。エストロゲンの量が多いと子宮内膜が異常増殖して子宮がんになってしまう可能性があるため、それを予防する目的で併用されることもあります。この場合、エストロゲンの服用期間が3ヶ月に満たない短期間なら子宮内膜の増殖に大きな影響が出ないことが分かっているため、黄体ホルモン製剤は使用されません。また、生理が止まって5年以上経過している人で出血しない治療を希望する場合はエストロゲンと連続して黄体ホルモンを使用するといった具合に、患者ごとの希望や状況に応じて治療内容を変更していきます。

このように、更年期障害の治療として投与されるイメージの強い黄体ホルモン製剤ですが、その一方で子宮がんという女性にとって重大な病気への効果的な予防法としても活用されています。もちろん使用にあたっては主治医の判断と処方が必要なので、自己判断で投与を希望したりせず、主治医としっかり相談して決めるようにしましょう。

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